期外収縮の心電図の見分け方:上室性(PAC)か心室性(PVC)か
心電図で予定より早く出る拍(期外収縮)を見つけたら、次は上室性か心室性かを分けます。このページでは、上室性期外収縮(PAC)と心室性期外収縮(PVC)を、QRSの幅・先行する早いP波・休止の長さの3つの根拠で見分ける方法をまとめます。心電図検定3・4級対策の練習になるよう、最後に練習問題を2問用意しました。
見分ける3つのチェックポイント
根拠で見分ける3つのポイント
- QRSの幅:0.12秒以上と幅が広ければ心室性を考える。上室性は通常、幅が狭く、ほかの拍のQRSと同じ形。
- 先行する早いP波:上室性では早いP波が先行する。直前のT波に隠れやすいので、T波の変形にも注意する。
- 休止の長さ:前後のRRの和が基本のRRの2倍なら代償性で、心室性に多い。2倍より短ければ非代償性で、上室性に多い。
動画で見る:問題集の2問を根拠で解く
この3つの根拠で、問題集の2問を実際に解く動画です。幅の広い期外収縮を変行伝導と取り違えやすい問題と、早いP波がT波に隠れた問題を、心電図検定4級レベルを目指す医学生と一緒に解いていきます(約8分)。
3つのポイントを1つずつ確かめる
期外収縮は、12誘導の区画の境目にかかりやすく、2.5秒ずつの区画では早さが分からないこともあります。まず最下段の長いリズム記録(この教材の図ではII誘導の10秒間)で、RRを端から端まで追い、予定より早く出る拍を探します。早い拍を見つけたら、次の3点を順に確かめます。
1. QRSの幅:0.12秒以上なら心室性を考える
早く出た拍のQRSが0.12秒以上(25 mm/sの記録で小さい目盛り3個分以上)と幅が広く、形もほかの拍と違えば、心室性を考えます。心室性期外収縮では、T波がQRSと逆向きになることも手がかりです。上室性期外収縮のQRSは通常、幅が狭く、ほかの拍のQRSと同じ形です。
ただし、幅が広いだけで心室性とは決めません。上室性期外収縮でも、変行伝導を伴うとQRSの幅が広くなるからです。ここを見分けるのが、2つ目のポイントです。
2. 先行する早いP波:上室性なら前にある
上室性期外収縮では、予定より早いP波が先行します。変行伝導を伴ってQRSの幅が広くなった場合も、早いP波は先行します。心室性期外収縮では、先行するP波が見当たりません。幅の広いQRSを見たら、決め手は先行するP波の有無です。
早いP波は、直前のT波に重なって見分けにくいことがよくあります。早い拍の直前のT波を、ほかの拍のT波と高さや形で並べて比べてください。T波が高くなったり形が変わったりしていれば、早いP波が重なっていると考えます。
3. 休止の長さ:前後のRRの和を基本のRRと比べる
期外収縮の前のRRと後ろのRRを足し、期外収縮のない部分の基本のRRの2倍と比べます。
- ほぼ2倍:代償性休止。心室性に多い
- 2倍より短い:非代償性休止。上室性に多い
どちらも「多い」という傾向なので、休止の長さだけでは決めません。QRSの幅と先行するP波の根拠とあわせて判断します。
| チェック | 心室性に多い | 上室性に多い |
|---|---|---|
| QRSの幅 | 広い(0.12秒以上) | 通常は狭く、ほかの拍と同じ形 |
| 先行する早いP波 | ない | ある(直前のT波に隠れやすい) |
| 前後のRRの和 | 基本のRRの2倍(代償性) | 2倍より短い(非代償性) |
練習問題1:リズム記録の後半に注目

出典:PTB-XL v1.0.3(Wagner P et al., PhysioNet), CC BY 4.0。方眼紙上に描画するなどの改変あり(DOI)
練習問題1
上の心電図は、59歳の女性の12誘導心電図です。最下段のリズム記録(II誘導)の後半(約6秒以降)に注目してください。最も考えられる所見はどれでしょうか。
- 上室性期外収縮の二段脈
- 心房細動
- 完全左脚ブロック
- 心室性期外収縮の二段脈
- 非持続性心室頻拍
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正解:d 心室性期外収縮の二段脈
最下段のII誘導の後半では、幅の狭い洞調律の拍と、予定より早く出る幅の広い拍が、1拍ずつ交互に続きます。幅の広い拍のQRSは上向きで0.12秒以上あり、形もほかの拍と違います。直前には前の拍のT波があるだけで、早いP波は見当たりません。T波はQRSと逆向き(下向き)です。QRSの幅と先行するP波の2つの根拠から心室性期外収縮と分かり、洞調律の拍と1拍ずつ交互に出ているので二段脈です。前半(約3秒の位置)にも、幅の広い拍が単発で1拍あります。12誘導の区画では、V1〜V3の列に幅の広い拍が2拍記録されています。
この図では、幅の広い拍のあとに長い休止はなく、洞調律の拍は同じ間隔で続いています。休止の長さは「心室性に多い」という傾向なので、この問題のように、QRSの幅と先行するP波で決めます。
a 上室性期外収縮の二段脈:早い拍が交互に出る点は同じですが、上室性なら早いP波が先行し、QRSは通常、幅が狭くなります。この図の早い拍は幅が広く、先行するP波がありません。
b 心房細動:RRが全く不規則で、P波がありません。この図では前半の幅の狭い拍の前に同じ形のP波があり、基本の調律は洞調律です。
c 完全左脚ブロック:すべての拍のQRSが同じように幅広くなります。この図は幅の狭い拍と幅の広い拍が交互に出ます。
e 非持続性心室頻拍:心室性の拍が3拍以上連続します。この図の幅の広い拍は、1拍ずつ洞調律の拍と交互に出ています。
練習問題2:文章で根拠を当てはめる
練習問題2
12誘導心電図の最下段のリズム記録に、次の所見がありました。基本の調律は、P波が先行する規則的な洞調律です。1拍だけ予定より早く出る拍があり、そのQRSはほかの拍と同じ幅の狭い形です。早い拍の直前のT波は、ほかの拍のT波より高く見えます。早い拍の前後のRRの和は、基本のRRの2倍より短くなっています。最も考えられるものはどれでしょうか。
- 心室性期外収縮
- 洞性不整脈
- 上室性期外収縮
- 洞房ブロック
- 2度房室ブロック
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正解:c 上室性期外収縮
3つのポイントを順に当てはめます。QRSはほかの拍と同じ幅の狭い形です(ポイント1)。直前のT波が高いのは、早いP波がT波に重なっているためと考えます(ポイント2)。前後のRRの和は基本のRRの2倍より短く、非代償性休止です(ポイント3)。3つとも上室性を指すので、上室性期外収縮です。
a 心室性期外収縮:早く出る点は同じですが、QRSの幅が広く(0.12秒以上)形も変わり、T波がQRSと逆向きになります。代償性休止を伴うことも多くあります。
b 洞性不整脈:紛らわしい選択肢です。RRが変わる点は似ていますが、洞性不整脈ではRRが徐々に長くなったり短くなったりします。この所見は、1拍だけ突然早く出て、そのあとに休止が続きます。
d 洞房ブロック:休止の前の拍は予定どおりに出て、休止はPP間隔のほぼ2倍になります。この所見では、休止の前に1拍が予定より早く出ています。
e 2度房室ブロック:P波のあとのQRSが抜けて休止が生じます。この所見の休止は早い拍のあとに生じたもので、QRSの抜けではありません。