心房細動と心房粗動の見分け方:RR・P波・基線の3つで判断する
このページで分かること
RRが不規則な心電図を見て、心房細動か心房粗動かを、根拠をつけて言い切れるでしょうか。このページでは、RR・P波・基線の3つを順に確かめて、2つを見分ける手順をまとめます。最後に、心電図検定4級レベルの心房細動の図を使った練習問題と、心房粗動を見落とさないための練習問題を1問ずつ用意しました。
結論:3つのチェックポイント
根拠で見分ける3つのポイント
- RR:不規則でも、それだけで心房細動と決めない。伝導比が変わる心房粗動でも、RRは不規則になる。
- P波:QRSの前に、一定のP波があるかを見る。
- 基線の心房波:不規則に細かく揺れるf波なら心房細動、規則的な鋸歯状のF波なら心房粗動。II・III・aVF誘導とV1誘導で探す。
動画:問題集の2問を3つの根拠で解く
この3つの根拠で、問題集の2問を実際に解く動画です。心電図が苦手な医学生と一緒に、RR・P波・基線の順に確かめていきます(約8分)。
3つのポイントをくわしく
1. RR:不規則でも、それだけで心房細動と決めない
まず、最下段のII誘導のリズム記録で、QRSとQRSの間隔(RR)を比べます。隣り合うRRを3〜4組比べて、長い・短いの並びに規則性(群をなす、交互に出る、なだらかに変わる)がなければ、RRは「絶対不整」です。絶対不整は、心房細動の最も確かな手がかりになります。
期外収縮なら、洞調律の規則的なRRが基本にあり、その中に早い拍が混ざります。どれが基本のRRなのか決められないときは、期外収縮の多発は選べません。
ただし、RRが不規則になるのは心房細動だけではありません。心房粗動でも、心房の波がQRSに伝わる割合(伝導比)が変わると、RRは不規則になります。RRは入口のチェックです。決め手は、このあとの基線の心房波です。
2. P波:QRSの前に一定のP波があるか
各QRSの前に、同じ形のP波が出ているかを見ます。洞性不整脈や上室性期外収縮では、RRが揺れても、QRSの前にP波があります。
心房細動では、どの誘導を見ても、QRSの前に一定のP波がありません。QRSの前の形も、拍ごとに違います。心房粗動でも、洞調律のP波はありません。代わりに、基線に規則的な心房の波が並びます。
3. 基線の心房波:f波(小文字)か、F波(大文字)か
QRSとQRSの間の基線で、心房の波(心房波)を探します。探す誘導は、II・III・aVF誘導とV1誘導です。
- 心房細動のf波(小文字のf):基線が平らにならず、不規則に細かく揺れます。間隔も形も一定しません。
- 心房粗動のF波(大文字のF):基線に平らなところがなく、鋸歯状(のこぎりの歯の形)の波が規則正しく続きます。間隔は大きい目盛り約1個(約0.2秒)で、1分間にすると約300回です。
動画の2問目の心房粗動では、II・III・aVF誘導と最下段のII誘導に、下向きの鋸歯状の波が同じ間隔で続いていました。RRは不規則でも、心房波は規則正しかったので、心房粗動と判断できます。
f波は小さいこともあります。f波がはっきりしない記録では、RRが全く不規則なことと、P波がないことで、心房細動と判断します。
なお、心房頻拍でも心房波は規則的に並びますが、心房波の間に平らな基線があり、心房のレートは通常1分間に250回未満です。基線が平らになるかどうかが、心房粗動との違いです。
練習問題1:45歳男性の12誘導心電図

出典:PTB-XL v1.0.3(Wagner P et al., PhysioNet), CC BY 4.0。方眼紙上に描画するなどの改変あり(DOI)
練習問題1
上の心電図は、45歳の男性の12誘導心電図です。最も考えられるものはどれでしょうか。
- 洞性不整脈
- 心房粗動
- 心房細動
- 上室性期外収縮の多発
- 2度房室ブロック(ウェンケバッハ型)
解答と解説を見る
正解:c 心房細動
3つの根拠がそろいます。
- RR:最下段のII誘導で、RRは拍ごとに違い、長い間隔と短い間隔が不規則に混じっています。基本となる規則的なRRが決められません。
- P波:どの誘導でも、QRSの前に一定のP波がありません。
- 基線:II誘導の基線が平らにならず、不規則に細かく揺れています(f波)。揺れは小さめなので、1と2もあわせて判断します。
QRS幅は狭く、心房細動です。
ほかの選択肢を外す理由です。
- a 洞性不整脈:RRは揺れますが、なだらかに変わり、各QRSの前に同じ形のP波があります。この図にはP波がありません。
- b 心房粗動:規則的な鋸歯状のF波(約300/分)が続きます。この図の基線の揺れは細かく、間隔も形もそろっていません。
- d 上室性期外収縮の多発:いちばん紛らわしい選択肢です。洞調律の中に早い拍が混ざる形で、P波があります。この図には、基本となる規則的な調律がありません。
- e 2度房室ブロック(ウェンケバッハ型):P波が規則的に出て、PRが徐々に延びてQRSが抜けるので、RRの変化は同じパターンを繰り返します。この図はP波がなく、RRの変化にパターンがありません。
練習問題2:RRが不規則な心房粗動を見落とさない
練習問題2
ある患者の12誘導心電図で、RRは不規則(約0.8〜1.6秒)でした。QRS幅は狭く、QRSの前に洞調律のP波は見当たりません。II・III・aVF誘導では、基線に平らなところがなく、下向きの鋸歯状の波が、大きい目盛り約1個(約0.2秒)ごとに規則正しく続いています。最も考えられるものはどれでしょうか。
- 心房細動
- 心房頻拍
- 洞調律と上室性期外収縮
- 心房粗動
- 2度房室ブロック(ウェンケバッハ型)
解答と解説を見る
正解:d 心房粗動
基線に平らなところがなく、規則的な鋸歯状の波(F波)が、約0.2秒ごと、1分間に約300回の速さで続いています。RRが不規則なのは、F波からQRSへ伝わる割合(伝導比)が変わるためです。F波が規則的でも、伝導比が変われば、RRは不規則になります。
ほかの選択肢を外す理由です。
- a 心房細動:いちばん紛らわしい選択肢です。RRが不規則な点は似ていますが、心房細動の心房波は、間隔も形も一定しません。この問題の心房波は規則的です。
- b 心房頻拍:心房波の間に平らな基線があり、心房のレートは通常1分間に250回未満です。この問題では、基線が平らになりません。
- c 洞調律と上室性期外収縮:洞性のP波を背景に、早い拍が混ざる形です。この問題では、すべての心房波が鋸歯状で、同じ間隔です。
- e 2度房室ブロック(ウェンケバッハ型):洞調律のP波が規則的に出て、PRが徐々に延び、QRSが抜けます。この問題に洞性のP波はありません。
RRの不規則さだけで心房細動と答えると、この問題を落とします。RRのあとに、P波と基線まで確かめてから答えを選びましょう。